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環境を守るため富良野で会社経営する親子の挑戦!ペレットでラベンダーの廃棄を最小限に!?

”富良野”と聞くとやはりラベンダーを思い浮かべる方が多いと思いますが、見頃を過ぎたラベンダーの多くは、香料が残っているにもかかわらず捨てられてしまうことをご存じでしたか?富良野ではこのラベンダーをさまざまな加工品に活用しているところが多く存在します。
今回ご紹介するのはふらの香るこつぶというペレット状の芳香剤です。
ペレットとは、乾燥した木材を小さい円筒形に圧縮成形した木質燃料で、ストーブなどの燃料に利用されるものです。

木質ペレット

このふらの香るこつぶをふるさと納税の返礼品に出品されているのは、主にペレットストーブや太陽光・風力・小水力発電システムの設置販売を行っている有限会社三素さん。今回は創業者である家次 敬介(いえつぐ けいすけ)さんと息子の奎多(けいた)さんにお話を伺いました。
幼い頃から自然環境やテクノロジーに興味を持つ変わった子どもだったという敬介さんが、自然エネルギー利用の会社を立ち上げるまでと、その想いを受け継ぐ奎多さんのストーリー。二人が考える会社や富良野の未来に迫りました。

ふらの香るこつぶ

1.自分のやりたいことを仕事にして、社会貢献する


ー敬介さんが自然エネルギー利用に焦点を当てた会社を立ち上げた経緯を教えてください。

「僕は小さい頃から変わった子で、小学3年生の時『食糧危機が来るかもしれないから食糧の増産をしなきゃいけない。そこでバイオテクノロジーを使って魚類を増殖したらどうだろう?』と当時考えていたことを授業中に話して、教室をシーンとさせたことがありました。この時、こういう事ってあまり公の場で言っちゃいけないんだなと子どもながらに悟ったんですが、一方頭の中では、『環境や社会をこういうふうにしたい!』ということをずっと考え続けていました。
だから会社をつくる時も、環境面で社会貢献ができる会社にしたいと思ったんです。僕は怠け者なので、自分がやりたい環境に関する仕事をしたら、一生懸命取り組めるし、周りの人の住む環境が良くなって社会貢献もできる、なおかつ自分もご飯を食べていける。そんな生き方がしたいと、ちょっと欲張りな考えで会社を始めたところもあります。
自営業を選んだのは、これしか僕の中に選択肢がなかったからです。人間関係を会社の中で気にしながら仕事をすることが性格的に難しいなと感じて、自分のやりたいことを自分のペースでできる環境を考えたらこの形でした。こういう生き方しかできなかったという感じですかね。」

ペレット加工工場

「食糧危機の考えもあって水産系の高校に進みたかったんですが、親に『そんな若いうちから親元を離れたら親不孝な子になるからダメ』って大反対されて行けなかったんですよね。それで富良野市内の高校に進学して、大学こそは水産系に行こうと思ったんですけど、怠け者だから学習塾もサボって行かなくなってしまって。それでまた親に、『就職できる学校に行きなさい』と怒られて、職業訓練校で1年間電気工事や電気の勉強をして、20歳の時に電器屋に就職しました。
それから今の会社の前身である、テレビや冷蔵庫など一般家庭用の家電製品を販売する家電屋を創業して、形を変えて今に至ります。
電器に関しては小さい頃から興味があって、オーディオなどをいじるのが好きだったんです。学校の授業に、はんだごてで基盤を作ったりっていうのがありますけど、小さい頃からそういうことはしていて、昔は部品屋さんがまちにあったから部品を集めてラジオを作ったりしてましたね。」


2.温めるとよりひろがる、ラベンダーの香り


ー  ふらの香るこつぶ  ができた経緯を教えてください。

「今から15年くらい前に富良野市の環境課の方から、『廃棄するラベンダーをペレットなどにして商品に出来ないだろうか?』という相談があったんですね。
僕はもともと二酸化炭素を発生させない燃料を普及させるために燃料用ペレットを作りたいと考えてはいたんです。ただ当時は専用機械を持っていなかったし、燃料用ペレットだけで利益を出すのは難しいかもしれないと手を出せていなかったんですが、ラベンダーの再利用事業もあわせて行うならできるかもしれないと思って始めましたね。」


ーふらの香るこつぶはどのように作られるんですか?

「まずは刈り取られたラベンダーを広げて乾かします。2週間以上かけて完全に乾燥させないと加工の段階でうまく固まらないんです。使用しているラベンダーは、ふらのワインハウス前のラベンダー畑を中心に100%富良野市産になります。
十分に乾燥させたら、次は木質ペレットを作る機械で圧縮して粒状にしていきます。圧縮の過程で熱が発生するので、熱せられたラベンダーの良い香りが工場中に充満します。できたてのペレットは触ると温かいんですよ。」

乾燥中のラベンダー
機械上部から乾燥させたラベンダーを投入
出てきたラベンダーのペレット


ー木質ペレットと同様の製作工程とのことですが、ペレットストーブの燃料としても使うことができるんですか?

「燃やすことはできますけど、灰が多く出るので燃料としてはあまり向いていないですね。ただ火力は通常の木質ペレットくらいあります。もしペレットストーブがある方は、通常のペレットに少し混ぜて燃やしてもらっても良いと思いますよ。燃やすとちょっとお線香のような香りがしてきます。
おすすめの使い方は、お皿にふらの香るこつぶを乗せてストーブの上に置いて温めてあげることです。少し熱を加えると香りが出やすくなるので、すごくよく香るんですよね。ぜひ試してみてください。」

できたての"ふらの香るこつぶ"


3.中学生で敏腕営業マン?!


ー奎多さんはいつ頃から会社の事業などを知り始めたんですか?

「小さい頃から『旅行するぞ』と言われて、連れて行かれた場所でストーブの展示会に出て、終わったその足で海に遊びに行ったりという感じだったんですよね。北海道のいろんなところに行かせてもらった記憶があります。
何度も展示会について行っていたので、小学校中学年くらいでペレットストーブのことはなんとなく分かってきてました。だから商品の知識から始まり、自然エネルギーとか環境への意識もいつも間にか染み付いていました。英才教育を受けていた感じです。
中学生の時に、社長も誰もいない時に突然お客さんが来てしまったことがあったんです。僕がお客さんにパンフレットや資料を渡して軽く説明して帰ってもらったら、後日ストーブが売れちゃったことがありました(笑) これが僕が初めて商品を売った瞬間でしたね。」

(左)敬介さん (右)奎多さん


ー各商品の違いや特性は敬介さんから教えられたんですか?

「いえ、いつの間にか覚えてしまってましたね。それこそ展示会に行くとうちの社長はもちろん、他のメーカーさんもいらしている場合があるので、その営業トークが勝手に耳に入ってくるんですよね。『このストーブはこういうところがメリットなんだな』とか盗み聞きして、次自分のところにお客さんが来たら聞いた話をそのまま伝えるっていうことしていたので、ほとんどコピーアンドペーストです。」

展示会の様子


ー父親と同じ仕事をしたいと思ったきっかけはなんですか?

「高校まで富良野市で過ごして、大学は北海道江別市の酪農学園大学というところにバスケ部のスポーツ推薦で入りました。
家業を手伝うことを考えたきっかけは、大学4年生の時に環境教育の授業の一環でドイツに行ったことかもしれないです。
ペレットストーブはヨーロッパが先進していて日本の10〜20年先を行っているようなところなので、エネルギーの使い方やどういったペレットストーブの活用方法をそこで知りました。まず灯油ストーブがほとんど店に置いてないんですよ。日本の寒い地域は冬支度を始める時期になると、ホームセンターに灯油ストーブがズラッと並ぶんですけど、ヨーロッパのホームセンターはペレットストーブと薪ストーブがメインで並んでるんです。それくらい日本と違う文化がとても印象的でした。
それから大学卒業後は新潟県の燕三条にあるペレットストーブなどを作っている会社で3年間働いて、2020年2月に富良野市に戻ってきました。」

ドイツに行かれた時(左:奎多さん)
ペレットストーブ


4.ふたりが目指すこれから


ー敬介さんは今後、会社として富良野の環境をこうして行きたいという願望はありますか?

「そもそも僕がわがままで始めたような会社なので社会貢献という面では、富良野市が推し進めているゼロカーボンに出来る限り協力したいです。
富良野市はJICA(国際協力機構)の北海道の視察地になっているんですよね。僕はいろんな国からいらっしゃる方に、水力発電について説明したりしているんですが、富良野市がそういった環境教育のきっかけになるような場所になったらいいなと思います。」


ー奎多さんは今回敬介さんが話されたお話はご存知でしたか?
 また今後会社をこうしていきたいという想いはありますか?

「会社を作った経緯は知っていましたけど詳しく教えてくれないんですよ。こういう機会がないと聞けない話でしたね。
僕としてはもう少し大きな会社にしたいなと思っているので、従業員を増やしたいです。社長がいつまで120kgのストーブを持ち上げられるか分からないので、持てなくなる前に人を雇わないと、家業としてはすごく大きな方向転換をしないといけなくなってしまう。できれば防ぎたいことなので、もっと稼げる会社にして従業員を増やしたいとずっと考えていますね。」



編集後記

富良野市に移住して間もない頃、とある家庭にあったペレットを見たわたしは「これは猫砂?」と聞いてしまいました。
通常燃料として使われる木質ペレットは木材からできていますが、三素さんが製造しているふらの香るこつぶは、なんとラベンダー100%!!
おうちに置いておくと、北海道らしいさわやかな夏のラベンダー畑にいるようなリラックスタイムを過ごせるのではないでしょうか?
気になった方はぜひ、下のリンクからチェックしてみてくださいね!


有限会社三素の返礼品はこちら