「いつか富良野へ」を叶えたパワフルさと、やさしい手作りシフォンケーキのギャップ 増田直子さん
初回インタビューに登場いただくのは、バリアフリーの宿&カフェ いつか富良野へのオーナー 増田 直子(ますだ なおこ)さん。
ふるさと納税の返礼品には、手作りシフォンケーキを中心にキッシュや季節限定のアスパラを出品されています。
2011年に千葉県から富良野市に移住され、2014年に宿を開業。順調に客足が伸びていた矢先のコロナ禍で宿泊客との交流機会を維持するため、宿の食事で出されていたこれらをふるさと納税へ出品することにしました。
移住や宿開業の経緯から垣間見えるパワフルな行動力と、素材の味が楽しめるやさしいお料理のギャップは増田さんの魅力の一つ。
今回はそんな素敵なギャップをみなさんにも感じていただけたらと思います。
1.宿泊客に人気の無添加シフォン そのこだわりとは
ーふるさと納税の返礼品にシフォンケーキとキッシュを出品されたのはなぜですか?
「出せるものがこれしか無かったからなんだけど(笑)
どちらも宿で出していてお客様に好評で自慢だったからね。使われてる素材も富良野らしいじゃない?シフォンケーキは卵がメインだから、富良野で生まれた濃厚な“さくらたまご”と小麦粉は上富良野産の“きたほなみ”を使ってる。キッシュだったら生クリームや中の野菜も富良野市を中心に道内で採れたもの。」
ー増田さんのシフォンケーキはパサパサせず、かと言って水っぽくもない絶妙なふんわり感があって、砂糖に頼らない自然な甘さがスゴイ!と思っているのですが、何かこだわりはありますか?
「添加物は一切入れずに、卵白の膨らむ力だけを利用してベーキングパウダーは使ってない。はじめはバニラエッセンスなんかを入れてたけど、たまたま切らしちゃって一度入れないで作ってみたら『この方が美味しいじゃない!』となった(笑)
賞味期限は作った日から5日間。冷凍の方が日持ちはするけど、やっぱりちょっと味が落ちちゃう。特にキッシュは冷凍できないんだよ。だからふるさと納税にはどちらも冷蔵で出してる。添加物が入っていないことが本当に売りだから、ぜひ届いたその日のうちに食べてほしいな。」
ーもともとお菓子作りやお料理がお好きだったんですか?
「お菓子を作るのは好きだったかな。3人の息子がいるんだけど、子どもがまだ幼い時の誕生日ケーキは市販じゃなくて毎回イチゴのショートケーキを手作りしてた。
けどお料理はそんなに好きじゃなかったような気がする。育ち盛りの男の子3人がいると、うちで作るご飯なんてもう大皿でドーンって!見て楽しむなんてことはなくあっという間になくなる、そんな感じだったのね。
そんなこともあって、宿やるって決めたときはお料理が一番心配だった。だから移住する前の半年間、当時住んでいた千葉県の料理教室に通って、今で言う映える料理の盛り付けや並べ方っていうのを学んだ。」
2.富良野への想いを増幅させた人とのかかわり
ー富良野市への移住のきっかけは?
「そもそもは東京で開催された北海道移住フェアのようなイベントに参加して富良野市のブースで職員さんにお会いしたこと。その後、当時富良野市がやっていた移住関連のブログを見つけて、そこで移住したい人とかすでに移住した人と投稿やコメントでやり取りをしたりオフ会に参加したりしてた。こういう交流も移住へのステップになったし、ただ富良野市に住むだけじゃなくて何か役に立つことをしたいなと思いはじめたの。
それからたまに富良野に遊びに来るようになって。あるとき中富良野町にある、移住者の女性が一人でやられている“歩風里”ってペンションを見つけて、はじめて小さな宿に泊まった。そしたらオーナーさんに四季が綺麗だからまたおいでって誘われて3ヶ月に一度のペースで富良野に通うようになったの。この頃から『あ、やっぱここに住みたいわ』と本気で思うようになっていったかな。
結局2011年10月に一人で富良野市に移住して、翌年の3月には移住にあまり興味が無かった主人も富良野市に来た。主人はホテルで働いて、わたしもまだ市内で介護の仕事を続けてた。」
3.介護×宿で誰かの役に立つことを
ー宿をやろうと思ったのはなぜですか?
「富良野に通ってた頃に出会った“歩風里”のオーナーさんが、やっぱりすごいきっかけになって。
よその土地から富良野に来て何かやることの意義を感じたり、一人で宿をやれるんだ!という衝撃があった。そこでじゃあわたしに何がやれるかって考えたら、わたしも宿をやってみたいなと。」
ーバリアフリーに特化した宿はとても珍しいと思うのですが、それは介護のお仕事のご経験から?
「そうね、介護の仕事をしていたとき、訪問先のおじいちゃんとかおばあちゃんと話してると旅好きな人って結構いて。
『昔はよく旅したけどもうこんなになったらいけないなあ』とか『行きたくても泊まれるような宿が少ない』なんて話をよく聞いてたから、わたしがやるならそういう人たちが泊まりやすい宿にしようと思って、バリアフリーの宿になったのね。」
ー 一風変わった宿の名前“いつか富良野へ”にはどんな意味があるんですか?
「“いつか富良野へ”と言う名前は、わたしが富良野市に移住する前に書いていたブログの名前だったから、いつでも初心に戻れるようにってこれ決めたの。それとうちに来たお客様が『またいつか富良野へ来たいなあ』とか、まだ来たことがない人が『いつか富良野へ行ってみたいなあ』と思ってもらえるようにって想いも込めてる。
宿の土地を探しているとき、不動産屋さんのおじちゃんが『お客さんの好きそうな場所、個人的に知ってるよ』って教えてくれたのが今のところで。この辺りは移住前のブログを書いていた時期にしょっちゅう通ってたところだったから、紹介された時はここに縁があるのかもと思った。
場所をここに決めてからは、設計士さんと二人三脚でバリアフリー様式の宿を設計して、2014年の11月には建物ができて翌月には開業したかな。」
4.シフォンケーキの販路拡大へ新しい挑戦
ーようやく観光客も戻ってきそうですが、今後の展望としてどんなことを考えていますか?
「今はシフォンケーキのネット販売を検討していて、それをきっかけに新商品を考えたり、富良野広域を対象に商品を置かせてもらえるところを増やせるよう動いているところ。そのためには設備的な部分を整えたり、今後は宿泊のお客様も戻ってくるだろうからアルバイトさんも雇ってよりたくさんの方に富良野を楽しんでいただきたいね。」
編集後記
取材は午前9時からお願いしていたのですが、増田さんの起床時間はなんと早朝4時!現在は金土日に限りシフォンケーキを販売しているため、その前は宿の準備なども重なり慌ただしいんだとか。
一方で『富良野のおかあさんだと思っていつでも来てね』とにこやかにおっしゃってくれるやわらかな雰囲気も兼ね備えた方でした。
フワフワで卵の味がしっかり感じられるシフォン、サクサクと香ばしい生地に旬の食材(取材当時はアスパラでした!)がたっぷり入ったズッシリと食べ応えのあるキッシュ、ぜひご賞味ください!